STOL-短距離離着陸
Short Take-Off & Landing
【STOL-エストール】


 
スウェーデンの戦闘機はサーブ初の超音速戦闘機J35ドラケンからJ37ビゲンそしてJAS39グリペンと他国には例を見ることの出来ない優秀なSTOL性能を持ちます。

スウェーデンのお国柄、自国から積極的に攻撃を仕掛けはしません。先制攻撃は他国から受ける事になります。「先手必勝」の言葉通り、先制奇襲ほど攻撃側に有利な状況はありません。太平洋戦争の真珠湾奇襲でも、反撃は僅かで、多くの戦艦を沈めて圧倒的日本の勝利であったことと同じです。(アメリカに参戦を許したとか戦略的な事や攻撃目標選定が悪かった等、問題点は別として)

通常、先制攻撃は航空機により行われ、相手の制空権を潰す作戦が行われます。つまり真っ先に狙われるのは飛行場であるわけで、戦闘機をいくつかの大きな格納庫内に集中的に配置している場合、最悪一発の爆弾で飛行隊全滅ということもあり得ます。相手がそれなりの空軍力を持つ国であらば、15分で空軍が全滅してしまうかもしれません。事実、第2次中東戦争では、エジプトの航空基地はイスラエル空軍の奇襲を受けて一日で500機もの航空機を失い、開戦初日で空軍はほぼ壊滅してしまいました。一瞬で戦闘機がほぼ壊滅してしまうような憂き目にあっては、億円単位の戦闘機を揃える意味がありません。そこで、スウェーデン空軍は先制奇襲を受けても耐えぬき、確実な報復を行える様独自の思想を持った運用方法が行われています。

その独自の思想というのが、山を掘った防空壕や森林内に設置された偽装シェルターに機体を全国に分散配置し、近くの高速道路を滑走路として使用するという、スウェーデン空軍やグリペンを話題にするのに切っても切れない運用法です。
各地に分散配置をして隠せば、先制奇襲を受けても攻撃される事は無く、被害は最小限に食い止められ確実に反撃を実施して「痛い目」を見させられます。直線の限られた高速道路での離着陸を行うために、スウェーデンの戦闘機にSTOL性能は無くてはならない最も重要な要素の一つな訳です。

JAS39グリペンは空対空兵装状態で700mの直線があれば離着陸を行う事ができます。F-15やSu-27は、兵装の無いクリーン状態で強力なエンジンをフルパワーで使用することにより300mで離陸してしまうのと比較すると一見大した事が無さそうですが、着陸は別です。F-15の着陸を見るとタッチダウンから延々とウィリーのように減速走行をしますが、如何せん重量が重いためかなりの距離を制動に費やし、イーグルの運用には1500〜2000m級以上の滑走路が必要とします。

とは言っても実際F-15は1500mも滑走しませんでしょうし、グリペンも制動に700mの距離を滑走しません。この数字はあくまでも安全係数を掛けた数値です。
B747旅客機は、3000m以上の滑走路が好ましいとされていますが、実際滑走路の半分程度で離陸し、着陸しています。積載量の少ない羽田空港(国内便のため積載量が少ない)や成田空港など747を多く運用している空港へ行って見るとよく分かるはず。飛行機を運用するには、最低でも滑走路端から加速し、離陸決心速度V1から制動できる安全距離が必要とされます。

また、短い距離だけあれば言いと言うものではなく、軽量であるということも重要な要素で、J37ビゲンはグリペンよりも強力なエンジンと加速力、スラストリバーサーを持ち、四百数十mの距離で運用が可能ますが、重量が倍近く重いため、ビゲンを運用する場合は高速道路を補強しなくてはなりませんでした。何故なら、タッチダウンの衝撃でに舗装面を割ってしまうか、耐久疲労を誘発してしまうからです。これでは柔軟性を持たせるためのSTOLが、逆に足かせを生み出し、かえって逆効果になってしまいます。

ビゲンの教訓から、グリペンは滑走距離要求を緩和し軽量化を実現したため、空対空兵装であらば補強無しの高速道路から運用できるようになり、滑走距離は増えたもののビゲンより多くの場所で運用可能になりました。なお、カナード翼はタッチダウンすると自動的に前へ最大角稼動し、エアブレーキの役割を果たします。

全くの余談ですが、プレイステーション2のエースコンバット04という戦闘機シューティングに、敵国のエースクラスのみを集めたSu-37飛行隊が高速道路を滑走路と使用し、トンネルを格納庫とするストーリーがありました。恐らくは、第2次世界大戦のドイツでアウトバーンを使用しメッサーシュミットやフォッケウルフを運用したのをモチーフとしていると思われますが(何せライバルが「黄色の13」アフリカの星です。)、実際Su-37なんて重い機体を運用しようものなら、着地した瞬間に滑走路を割ってしまいそうですね。
個人的にグリペンであったならばなぁと思っています。最も最強のライバルがグリペンでは迫力が無いと言われそうですが…。それ以前にゲームに難癖をつける時点でナンセンスでしたね。



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